認知の風 その1 アルツハイマー型認知症との診断

 「脳のこの海馬といわれる部分に少し隙間があるのがわかりますか? 典型的なアルツハイマー型認知症です。」
 2018年10月。母のもの忘れが気になって受診した神経内科の先生にこう告げられた。想像はしていたけど、いざはっきり言われると複雑な心境だった。
 母には健康な体に産み育ててもらった恩義はあるものの、基本は自分勝手な人でまわりの人間への思いやりにかけるタイプで、物心ついた頃には母から離れることばかり考えていた。大学3年のときにやっと家を出て一人暮らしを開始。以降、時々夕飯を実家に食べに行ったりはして親のすねはかじっているものの、精神的に頼る部分はなかったと思う。人間皆いつかは死ぬわけで、母も当時77歳で何か病気が出てきても不思議ではなく、それこそガンで余命3か月ですといわれるよりはよっぽど軽いという気もした。ただ同じ病気だったおじいちゃんを見ていて、私のこともわからなくなり、介護に苦労している母達も見ている。メディアでも取り上げられていて怖い病気とも当然思う。
 先生からは一人で生活するのは無理ですと言われたけど、この時点では母は自分で家事をして生活もできていたので、とりあえずはこのままでと思った。父は脳梗塞で要介護3でもあったため、すでに施設に入っていて母は一人暮らしではあったけど、父の施設に通うのが日課というかもはや生きがいにもなっていて、それなりに楽しく生活はできていたと思う。
 初期の症状なのかどうなのか、母はとにかくキレやすく些細なことでも怒鳴りちらすし、一緒にいたくなかったというのも正直あって私は母から逃げてもいた。私は私で仕事して、功ちゃんがいて、友達もいて、子供はいないけどペットもいて、自分の生活を崩されたくないというのが正直な気持ちだった。
 父のケアマネージャーさんに連絡をして母の対応もしてもらうことになり、そういう手配だけして母には今まで通りの生活をしてもらうことにした。病気はゆっくりと進行はしていたようだが、ドメぺジルの薬を飲んで、1年間は何事もなく過ごせたように思う。1年後、父が亡くなるまでは。
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