人工受精でうまくいかなかった私は、とうとう最後の砦ともなる体外受精を行うこととなった。人工受精とは金額も桁が一つ違う。人工受精が1回2万円弱なのに対して体外受精は1回20万円弱。金額もさることながら、卵巣に針を刺して卵子を取り出す、針を刺すというのがさすがに抵抗があった。先生に聞いてみた。「針を刺すのは痛いですよね?」「そのときによりますが、局部麻酔はするのでお腹を押される感じがするだけで大丈夫な場合が多いですよ。」ほんとかなあ、とは思ったが、針さすのがどうしてもいやだから、という理由でやらないというのも違う話かと思ったので覚悟を決めた。 針をさすのが痛かったかどうか。これは正直施術する先生の腕によるところが大きい。確かにお腹が少し押されるだけというときもあるかと思えば、鈍痛ではあるけれどすごく痛いときもあった。私の場合大学病院で数名の先生がいて、曜日で担当がわかれているようだったので、痛くない先生の曜日に採卵日をあわせるように1日とか調整できそうならしてみたりした。 初めての体外受精の日。卵は左右の卵巣から2個ずつの合計4個が採取できた。普通は卵巣1コに1コの卵(卵子)ができる。体外受精の場合は薬を飲んで極力多くの卵がとれるようにする。その結果私の場合は4個だったが、ネットでみると10個とれたとか、とんでもない数の書き込みがあった。きっと若い元気な方なんだろうなあと、4個でもすごいと感動している私はやはり高年齢かと実感した。 実際この4個はすごかった。このあと何回繰り返したかなあ。だんだんとれる卵の数は減っていった。4個もとれたのって、最初の2回だけだったような。その後2個になり1個になり、1年後には卵すら育たなくなってきた。 人工受精のときも感じていたけど、私は右の卵巣を卵巣嚢腫で手術した。卵が育つ割合というのが、左よりも右の方が圧倒的に多かった。右の卵巣の方が活発だったから、卵巣嚢腫にもなったんだなと、つくづく納得した。 ということで、卵巣嚢腫になった皆さんに言いたいのは、卵巣嚢腫になるということは、それだけ卵巣が健康で活発な証拠! 人口の減少を食い止めるためには、1人の女性が2人の子供を産む必要があるという単純な計算式があるけど、2人産むということは約2年は生理が止まる期間がある。つまり子供を産まずにきた私は、子供を産んだ人より2年は多く生理を繰り返しているということになるため、そりゃあ卵巣嚢腫のリスクもあがって当然でしょう。体はうまくできてるもんだなと思った。 体外受精を繰り返していって、薬で無理やり卵を育てていたせいか、結果的に体がどんどん疲弊していった。体外受精は短期決戦だと思った。卵胞は左右ともに育っているのに、針を刺してみると、卵が1つもとれないという事態を経験することとなる。看護師さんがきて、「卵はありませんでした。」といいにくそうにいう。「ひとつもですか?」と聞いてみる。「卵胞は育っていたのにですか?」と2度聞いてみる。答えが変わらないのはわかっているけど、気持ちを落ちつかせることができず、聞かずにはいられなかった。聞いているうちに涙がこぼれた。リクライニングチェアが一つ置いてあるだけで、出入口はカーテンで仕切られており、外の声は聞こえてくる小さな個室風のスペースで休んでから帰るのだが、看護師さんに「少しゆっくり休んでいっていただいて大丈夫ですから。」と優しくいわれ、余計に泣けてくる。 卵がうまく育たなかったときにお腹にホルモン剤のテープを貼る治療を受けた。そうしたら2週間遅れて無事卵胞が育ってきた。その結果が出たときに先生がとっても明るく「卵が育ってきましたよ。ちゃんと治療すれば卵できますからね。」といってくれたその言葉で一気に涙があふれた。こんな可能性のなくなってきている私に、まだまだ希望を与えようとしてくれる先生の優しさと思いやりがあまりにも身にしみた。子供は勿論自分のために作るのだけど、この先生に子供ができましたと報告したい。なんとか妊娠できないものだろうか、なんとか方法はないものだろうか。 そして私はやっと1つの事実に気がつくことになる。
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