第4話 2つの試練

 子供を作ろうと思い、一般的な方法をとってみた。ただ実際なかなかうまくいかなかった。朝陽が差し込み日が沈む時間を確実に紡ぐかのように、正確すぎるほど正確に28日周期で生理はやってくる。生理周期が安定しているということは健康な女子である証拠だと思うんですがねえ。なぜに生理はくる?
 ところがそうこうするうちに新たな試練が。功ちゃんがなんとぎっくり腰に!
 明石家さんまさんが、ぎっくり腰になった瞬間に「わー!」といって、思いっきり伸びをしたら一発でぎっくり腰が治ったといい、お医者さんもそれは正しい方法だとおっしゃっていたが、それは想像を絶する痛さでとてもできることではないと功ちゃんはいう。ぎっくり腰の本人がそういうのだからきっと間違いないことで、明石家さんまさんって改めてすごい方だなあと思った。
 功ちゃんのぎっくり腰は1週間ほどで普通の生活に支障のない程度には治ったが、子供を作るのはちょっと躊躇する状況になった。さらに追い打ちをかけるかのように、今度は私が子宮がん検診でひっかかった。がんになる前の異形細胞があるとの診断で、異形細胞のある部分を焼き切る治療をすることとなった。
 焼き切る処置は局部麻酔で行うため、まわりの状況がよくわかるのだが、処置をしている先生がなにやら後ろにいる他のスタッフと話をしている。何を話しているのかよく聞き取れはしないものの、どうも私の治療とは関係ない話のようである。何? 雑談してる? 処置しながら言葉を発するのもどうかと思うが、しかも雑談ってどうなんでしょう。雑談しながらでもできる程度と、私の気持ちを和らげようとしている? そういえば、歯医者さんで歯石をとってもらっているとき、歯科助士さんがしょっちゅう他のスタッフと話をしている。話なんてしないで私の歯の治療に専念してほしい、違うところを削ったらどうしてくれるのかといつも思うのだけれど。あれもリラックスさせようとわざと話しているのだろうか。
 リラックス効果を狙っているかどうか定かではないが、私の異形細胞を焼き切る治療は難なく終わった。子供を作りたいという話をしたが、半年はダメだといわれ、また時間が過ぎてどんどん歳をとるなあと、そんな話をしてみたら、異形細胞の処置をしてくれた先生が、「この病院にも不妊治療専門の外来がありますので、そちらで相談してみたらどうでしょうか?」と紹介してくれた。
 初めての専門外来の受診。一般的に1年程度子供ができなければ不妊というらしい。私はすっかり該当するということで、早速通うこととした。専門外来にきてみると、私よりも若そうな方も含めてかなり混雑していた。こんなにたくさん不妊で悩んでいる人がいるんだなあと改めて思う。
 最初は血液検査でホルモン値を見られた。FSH(卵胞刺激ホルモン)卵巣の機能を見る値で、生理中が低く基礎値となるため、そのときの値を測定する。11.8だった。10以下が理想とのことで、若干卵巣の機能が落ちているとのことだが、先生から言われた言葉は「歳相応ですね。」
 歳相応。なるほど。納得している場合でもないのだろうが、人間みんな良く見られたいのか、歳相応といわれると正直あまりうれしくはない。普通だと認めてもらえているというとても有難いことだと思うのだけれど、そこが人間の欲深さというものなのか。ただ欲はあり過ぎると少々見苦しくはなるが、反対になさ過ぎても成長できないように感じる。以上を踏まえ、歳相応と言われてあまりうれしくないという事象こそがおそらく一番多くの人に共感を得られる感情であろうという結論に達した。
 不妊というのは、男性側と女性側の問題がほぼ半分半分なのだという。功ちゃんの精子の検査もしてもらったが、特に異常はなく、結局不妊の原因は私の卵巣機能低下という先生の見立てだった。
 不妊治療は通常は基礎体温と血液検査で排卵日を見極めて、そのときにタイミングをとるタイミング法から始めるとのことだった。性交渉のことをここでは「タイミングをとる」というらしい。きれいな言葉でこちらも使いやすいしなかなか良いと思った。ところが、フーナーテストの結果があまりよくなかったこともあり、自然妊娠は難しいとの判断にて、人工受精を進められた。精子の中から元気なものを取り出して、子宮の中に直接入れるというものである。フーナーテストというのは、精子が卵管の中でどの程度運動しているか、どの程度直進できているかを見るテストで、タイミングをとってから6-12時間以内に病院にきて確認をしてもらう。治療という限り、ある程度の覚悟はしていたものの、病院の予約が先で、予約を入れたら
必ずその前にタイミングをとらないといけない。そんないつでもできるものでもないし。決められたときにするというのもつらいなあと、最初からつまづきつつ、なんとかテストは受けられた。結果、精子は私の体の中ではどうもちゃんと前に泳いで進んでくれないらしい。抗精子抗体というものがあるそうで、それがあるといわば精子を殺すらしいのだが、検査の結果、私は抗精子抗体は持っておらず、原因は不明だった。
 なんだか私って色々問題あるのかしら?なんて思いながら、人工受精の費用は自費となり約15,000円とやや高額ではあったが、功ちゃんの腰に負担もかけたくないし、迷うことはなかった。 
 いよいよ私の不妊治療が本格的に始まることとなった。

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