TVドラマの「ミステリと言う勿れ」の放送が終わりました。全12話だったのですが、10話とそこにいく2つ前の8話がとても感動しました。そこに出てくるライカさんという女性のお話です。内容にふれますのでもしまだ見ていなくてこれから見たいという方がいたら、見てからこれを読んでいただければと思います。 ライカさんという女性は多重人格の1人格であり、1人の人間としては存在しないという設定です。昔ヤヌスの鏡というドラマもありましたが、多重人格は時々取り上げられるものの、本人の元々の人格が「正」であって、生み出された別人格は消えていったり、別人格が優位に立つのは体を乗っ取られるような悪いことのような描き方をされるものが多かったように思います。でもこのライカさんは違います。淡々と感情がなく一見冷たく見えるものの、元の人格の痛みを全て引き受けるという大きな包容力と深い愛情を持っています。まさに母なる海のようです。こんな素晴らしい別人格を私は見たことがない。 元々の人格であるチヨコさんは、父親からの虐待で心を閉ざし、深層心理の奥深くに逃げ込んだため、その代わりとしてライカさんという人格が作り出されました。ライカさんはチヨコさんの痛みを引き受けるためだけに生まれてきたとのことです。ライカさんの望みはただ一つ、チヨコさんの幸せだけです。そして痛みを引き受ける存在であるが故に、自分が存在するとそれは痛みが存在するということであり、それではチヨコさんは幸せにはなれない、チヨコさんが本当の幸せを掴むためには自分は消える必要がある、でもそんなライカさんにも整(ととのお)くんへの感情が芽生えます。整くんと会いたいと願い、楽しい時間を共に過ごして、ライカさんは初めて生まれてきてよかったと感じることができます。そんなささやかな幸せすら得られなかったライカさんなのに、最後までまわりの幸せをまっすぐに願い続けるその姿は、もう涙なしには見られませんでした。 整くんが最後に自分も親から虐待を受けていたと明かし、その傷をライカさんに見せます。その傷を見たライカさんはいいます。「整くんの痛みも代わってあげられたらよかったな。」 私が同じような告白を受けたならば「つらかったね」と同情まではできると思いますが、自分が代わってあげられればとまではきっと言えないと思います。いくらライカさんが痛みを代わるための存在だったとしても、ライカさん自身が痛みを感じないわけではないし、痛みがつらくないわけでもないんです。なのに代わってあげたいと言えるなんて、もう想像もできない素晴らしい包容力だと私は思います。 チヨコさんが治療の末に正常な精神を取り戻しつつあり、ライカさんは消えていきます。見ていて惹かれずにはいられない存在で、ライカさんがいなくなるのはとても寂しい。とても悲しい終わり方ではありましたが、大きな優しさをライカさんには教えてもらいました。自分が優しくなれるような、何か説明できない一つの穏やかな感情を受け取ったような気持ちです。ライカさんを演じられた門脇 麦さんのお芝居も完璧だったのではないでしょうか。とにかく幸せそうなライカさんを見ていたくて、10話は4回繰り返して見てしまいました。写真もどれを載せるか迷いましたが、生まれて初めて焼肉を食べたときの笑顔のライカさんにしました。 ライカさんが感動的すぎたせいか、最終回は普通に終わってしまいましたが、なんとなく続編もありそうです。描く視点が斬新だと思える作品でもありますので、続編があるなら楽しみにしたいです。
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