お腹が痛い! 痛い痛い痛い! もうじき春がこようかと、そろそろクロッカスなんかも咲き始めるかという冬のおわりの日曜日。急な腹痛に襲われた。下痢かな?とトイレにいくと、改善したか?と一瞬は思うものの、すぐにそれが妄想であることがわかる。妄想でなく、願望かな。トイレにいけばきっと治るっていう。 それが全然治らない。ダイニングキッチンの冷たいフローリングの床の上をのたうち回る痛さ。それが30分続いたころ、いつの間にか私の横でしゃがみ込んでいた、功(こう)ちゃんこと、夫の河島 功がついに動く。「救急車を呼ぼう。」功ちゃん、いつの間にいたんだろう。テレビ見てたと思ってたんだけど、ちゃんとそばで見ててくれたんだ。優しい。というか、普通かな。 救急車に乗るのは実は2度目。1度目は20代後半の若かりし頃。寝不足が続いたせいもあってか、貧血で倒れたことがある。当時は血色素量が少し基準値を下回り、確かに貧血気味だった。朝会社に出勤し、ビルのエレベーターに乗ったはずが、あれ? ふと気がつくと、まわりに顔がいっぱい。「大丈夫ですか?」と口々に言われる。私の会社はビルの7階だったのだが、私は途中の4階フロアに倒れていた。エレベーター内で倒れたところを、引きずりだしてもらったのか、そこは定かでないが、とにかく自分の会社の階までたどりつけなかったようである。 「うちの人間が倒れたって?」そういって、人事部の鈴木さんが駆け込んできた。入社時の面接でしかしゃべったことのない人だったが、これまたどうやって知ったのか、私が7階の会社の社員だとわかり、連絡してくれたようである。エレベーターに乗ったときに、7階を押したからかな? エレベーターには10人は乗っていたと記憶しているので、私が7階だとわかった人はすごい観察力だなあ、と感心している場合でもなく、とにかく迷惑をかけてはいけないという思いが先にたったのか、「大丈夫です。」といって私は起き上がった。一応鈴木さんは私の腕をもって支えてくれる。少しふらつく感じはあったが、なんとか7階の女子更衣室までたどりつき、そこで寝転がることとなった。そしてまもなく救急車が到着したが、正直もう大丈夫だと思っていたので、救急隊員の方にも「大丈夫です。」と伝えたのだが、救急隊員さんも手ぶらでは帰れないものなのだろうか。私が起き上がろうとすると、かなりの力で肩を押され寝かされて「起き上がったらまた倒れますよ。」もう「はい。」というしかなく、私は救急車に乗ったのだった。 救急車は10分ほどで到着。早くて日本の医療体制って優秀だなあと思いながら、救急車に乗る。ここで1つ救急車に乗るときのポイントがある。靴をもっていくこと! 担架で運ばれるので当然救急車に乗るときは靴は履いていないのだが、救急車で病院に行き、処置してもらったあとは普通にうちまで帰らないといけない。すなわち必ず靴がいる。1度目の時は靴をもっていくのを忘れてしまいあら大変! 裸足でタクシーに乗って帰った記憶が妙によみがえり、痛みに耐えながら功ちゃんに「靴!」とだけ必死に伝える。功ちゃんはつっかけ(って今はいわないのかしら?)を1組持って救急車に乗ってくれた。 病院についた頃にはあたりは暗くなっていた。何時だったかもよくわからない。とりあえず盲腸とか胃腸炎を疑われ、レントゲンをとり、点滴をしながら念入りにエコー検査をしてもらったが、何もない。 「異常ありません。健康です。」いやいや痛いのよ、めちゃくちゃ! 何もないわけないでしょ! 「こんなに痛いのに異常ないんですか?」と聞くも「はい。全く何もありません。」と不毛な会話。 「ただもしかすると婦人科系かもしれません。今日は日曜日で婦人科系は検査ができませんので、明日婦人科を受診してみてください。とりあえず今日は痛み止めを出しておきますので。」 翌月曜日。朝から会社を休んで婦人科を受診したところ、「右の卵巣が腫れてます。4.5㎝です。」と、いともあっさり。そういえば、2年前に同じようにお腹が痛くなって近所の内科のお医者さんに行ったところ、私のお腹を触っただけで「これは婦人科系かもしれないなあ。痛みが続くなら婦人科系を受診してみてください。」といわれたことがありました。あの内科の先生、なにげに名医だったんだなあ。昨日さんざん検査してもわからなかった腹痛の原因を2年も前に触診だけでいとも簡単にあててしまっていたとは! 思えば当時、原因不明で微熱や頭痛が続いていた私に「あなた、血が人の半分しかないよ! そりゃあ体調も悪くなる。鉄欠乏性貧血ですから、とにかく鉄剤を飲みなさい!」と言われた。先生いわく「赤血球っていうのは3ヶ月で新しく作られる。ただ前の赤血球が鉄分が不足して痩せていると、同じ痩せた赤血球が継承されてしまう。逆に3ヶ月かけて赤血球を太らせれば、太った赤血球が継承されて貧血は改善される。3ヶ月です。赤血球を太らせるための鉄剤を3ヶ月飲んでください。3ヶ月後に血液検査しましょう。」「あの、3ヶ月も鉄剤飲むんですか?」「今の説明聞いてなかった?」「はい、わかりました。」無駄のない効率のいい先生だったな。効率がいい=できる先生だなと改めて実感。 ということで私は「卵巣嚢腫」という病気との診断でした。卵巣嚢腫とは、簡単にいって生理のときの血液が逆流して卵巣に溜まってしまう病気。自分の血液がたまっているだけなので悪いものということはないが、大きく腫れてくるとまわりの腸なんかを圧迫して痛みを生じるのがとにかく問題で、痛み止めで痛みに耐えるしか方法はない。生理が止まれば改善されるので、だまって閉経するまで耐えしのげれば、それはそれでも良い。ただたいてい痛みを我慢できない。ネットで調べてみても「痛くて救急車で運ばれました。」という書き込みをいくつも見つけた。治療法は手術して腫れた卵巣の中身を取り出してしまうか、ホルモン剤を投与して生理を止めるか。さてどうしたものか。
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